
第208回
京のおみくじ

第208回
京のおみくじ

京阪的京都ツウのススメ
第208回 京のおみくじ
神仏の言葉を伝える様々なおみくじ
神仏からのメッセージと言われるおみくじの歴史や京都の社寺で授与される様々なおみくじについてらくたびの森明子さんがご紹介します。
おみくじの基礎知識
其の一、
運勢や吉凶を占うおみくじは、江戸時代に庶民の間に広まりました
其の二、
おみくじには漢詩や和歌が書かれているものがあります
其の三、
京都の社寺では様々な種類のおみくじがあります
観音菩薩の言葉がおみくじに
社寺にお参りした後、おみくじを引く人も多いでしょう。おみくじの歴史は古く、かつては国の政策や後継者を決める際に神前でくじを引き、神仏の意向としてその結果に従うこともありました。おみくじが庶民に広まったのは江戸時代です。平安時代の比叡山延暦寺の僧侶・元三大師が観音菩薩に祈念して授かったと伝わる百の偈文(言葉)を元にしたおみくじが普及。人々はそこに書かれた漢詩を読み取り、自分の行動の指針にしました。
引くのが楽しくなるおみくじも
おみくじには、吉凶や運勢のほかに、仏教の教えが漢詩で書かれたものや、神様の言葉である和歌が書かれたものがあります。また、筒を振ってみくじ棒を引く昔ながらのおみくじや、自分で選べる動物などの置物型のおみくじ、しおりとしても使えるおみくじなど、引き方やデザインは様々。京都にはこうしたおみくじを授与している社寺が数多くあります。お参りを済ませたらおみくじを引き、神仏のお告げを受け取ってみませんか。
京都の社寺で引いてみたいおみくじ
おみくじはお参りをした後に引きます。吉凶以外に書かれている言葉もよく読んでみましょう。
三千院 /左京区元三大師のおみくじ
三千院 /左京区
元三大師のおみくじ

天台宗の寺院・三千院では、おみくじの元祖といわれる元三大師ゆかりの、五言四句の漢詩が書かれたおみくじが授与されます。
貴船神社 /左京区水占みくじ
貴船神社 /左京区
水占みくじ

鴨川の源流域に鎮座する貴船神社の水占みくじは、おみくじをご神水につけると、文字が浮かび上がります。水の供給をつかさどる神様をまつる貴船神社ならではのおみくじです。
今宮神社 /北区和歌姫みくじ
今宮神社 /北区
和歌姫みくじ

玉の輿のご利益で知られる今宮神社には、『源氏物語』に出てくる和歌が書かれた和歌姫みくじがあります。十二単姿の女性が描かれ、香りも付いた優雅なおみくじです。
御金神社 /中京区御金みくじ
御金神社 /中京区
御金みくじ

金運で知られる御金神社のおみくじは、縁起が良いと言われるイチョウの葉がモチーフで、縁起物付き。吉凶には、珍しい大大吉も入っています。
晴明神社 /上京区五行みくじ
晴明神社 /上京区
五行みくじ

平安時代、占いなどを行う陰陽師として活躍した安倍晴明をまつる晴明神社。陰陽道で使われる魔除けの符号である五芒星の形のおみくじがあります。
北野天満宮 /上京区福みくじ
北野天満宮 /上京区
福みくじ

「天神さん」と親しまれる北野天満宮には、干支をかたどった陶器の中におみくじが入っている福みくじや、祭神・菅原道真の詩が書かれたおみくじなどがあります。
藤森神社 /伏見区馬みくじ
藤森神社 /伏見区
馬みくじ

馬を守護する神として信仰を集める藤森神社。馬みくじは陶器製の愛らしいおみくじで、おみくじを引いた後は、飾っておくこともできます。

おみくじを引いた人がすぐに結果がわかるように、おみくじの結果の一覧が書かれた扁額もあります。文子天満宮(下京区)には、1938(昭和13)年に奉納された扁額おみくじが掲げられています
おみくじあれこれ
- おみくじは漢字で「御御籤」や「御神籤」と書かれます。くじは神仏のお告げと考えられ、籤(くじ)に敬意の気持ちを示す「御」が付けられました。
- かつて神社でも、仏教に由来する元三大師ゆかりのおみくじがありました。しかし、明治時代に神仏分離令が出された後は、神社の由緒やご利益にもとづいた、神社独自のものが作られるように。神様の言葉が和歌で書かれたおみくじもあります。
- おみくじの結果は、大吉、吉、中吉、小吉、末吉、凶、大凶の7種類が一般的。吉凶の数や順位、また吉凶の割合は、社寺によって異なります。
伏見稲荷大社(伏見区)のおみくじの結果は17種類。非常に良い運勢の「大大吉」や、努力次第で大吉になるという「吉凶未分末大吉」など、他ではあまり見られないものもあります
- 戦国武将・明智光秀は、織田信長を討つため本能寺に向かう前に、愛宕神社(現・右京区)を詣でて神様の前でくじを引いていたと伝わります。
明智光秀が引いたおみくじの結果は、1回目、2回目は凶。光秀は吉が出るまで3回もくじを引いたと言う伝承もあります

ナビゲーターらくたび 森 明子さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2025年12月