
第209回
京都の神社と馬

第209回
京都の神社と馬

上賀茂神社 白馬奏覧神事
京阪的京都ツウのススメ
第209回 京都の神社と馬
馬にゆかりのある京都の神社
2026 年の干支・午(うま)にちなんで馬が注目されています。
実は、馬は神社ともゆかりの深い動物です。
「らくたび」の若村 亮さんが解説します。
馬の基礎知識
其の一、
馬は古くから神様の乗り物と考えられてきました
其の二、
京都には今も神前に生きた馬を奉納している神社があります
其の三、
京都の社寺では古式にのっとった競馬(くらべうま)が神前で行われています
神の乗り物として大切にされてきた馬
2026年は午(うま)年。干支(えと)にちなんで注目されている馬は神社とも深い関係があります。古来、馬は神様の乗り物だと考えられており、生きた馬を「神馬(しんめ) 」として神前に奉納する習わしがありました。一般的に神馬は白い馬で、神事に登場することもあります。この生きた馬を奉納する風習は、次第に馬の像や板絵を納めるように。神社の参拝に欠かせない絵馬はこのようにして生まれたのです。
京都には馬にゆかりのある神社がたくさん
日本では、馬の走る速さや騎手の技術を競う競馬(くらべうま)が古くから行われてきました。奈良時代の歴史書『日本書紀』には、7世紀に馬の走り比べを行った記述があり、これが競馬の始まりだと考えられています。平安時代には端午の節句の際に行われる宮中行事となり、その頃から神前でも競馬が行われています。上賀茂神社では、今でも5月に「賀茂競馬」が奉納されています。今回は、馬に関わりのある京都の神社をご紹介します。
馬にまつわる京都の神社
古くから、神様の乗り物だと考えられてきた馬。京都には馬にゆかりのある神社が多くあります。
上賀茂神社
(かみがもじんじゃ)北区

写真:神山号
年始には“白馬”を
祭神が降臨する際、馬に鈴をかけて走らせ、葵の葉を飾るようにと告げたと伝えられている上賀茂神社。神が降臨した山の名を冠した「神山(こうやま)号」という神馬が今も奉納されています。毎年1月7日には「年始に白馬を見ると1年の邪気が払われる」との言い伝えから「白馬奏覧神事」が行われます。
白馬奏覧神事は、元は宮中で行われていた「白馬節会(あおうまのせちえ)」に由来し、神前には七草粥を奉納、神馬には大豆を与えます
貴船神社(きふねじんじゃ)左京区

絵馬発祥の古社
雨や水をつかさどる神様をまつる貴船神社。古来、雨乞いの神として朝廷からも信仰され、神事の際は晴れを願う時には白い馬を、雨を願う時には黒い馬を奉納していました。平安時代になると儀式が簡素化され、板に馬の絵を書いた「板立馬(いたたてうま)」を奉納するようになりました。これが絵馬の原型と考えられています。
藤森神社
(ふじのもりじんじゃ)伏見区

午の方角を守護
平安時代、早良(さわら)親王が出陣前に行った儀式に由来する駈馬(かけうま)神事が、旧暦の午の月午の日(現在は5月5日)に行われてきたことから馬の守り神として信仰されています。また、神社の場所が平安京の南(午)に当たることも午(馬)の守護神とされている理由のひとつで、本殿の背後に方位除けの大将軍社があります。
藤森神社では毎年11月に競馬と馬を愛する方々の集いとして「駪駪祭(しんしんさい)」が行われます。それに合わせ、11月中は特別御朱印も授与されます
田中神社(たなかじんじゃ)伏見区

競馬ファンが勝ち馬祈願
創建当初は現在の地より北側の鳥羽里田中にあったことから、その地名をとって田中神社と呼ばれています。現在の場所に移ったのは江戸時代のこと。古くは周囲に魚市場があり、周辺には荷物を運ぶ馬借が多かったことから馬の神様として信仰されるようになったと言われています。
許波多神社(こはたじんじゃ)宇治市五ケ庄

頭に馬を冠した神像を所蔵
645(大化元)年創建の古社。かつては東の丘陵地に鎮座し、広大な社地を有していました。頭上に馬の頭を冠した神像をまつること、境内にあった東西2町(約200m)の馬場道で2頭の神馬により祭礼が行われていたことなどから、近年、馬にまつわる神様として親しまれてきています。
日本で現存唯一とされる平安時代の鐙(あぶみ/足をかける馬具)が社宝とされています

ナビゲーターらくたび 若村 亮さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2026年01月