神様と仏様が出会った坂本、延暦寺へ
「山王さん」に秘められた比叡の物語
本企画では、この「山王祭」を通じて、神様と仏様が共に祀られ、支え合ってきた日本古来の力強い文化に触れていただきました。
さらに、比叡山延暦寺の東塔(とうどう)エリアを訪ね、日吉大社が鎮守社として果たしてきた役割を学び、神様と仏様を結ぶ深い信仰の絆を静かに辿ります。
開催日時・場所
- 日 時
- 令和8年3月16日(月)
9時30分〜16時
- 会 場
- 日吉大社、芙蓉園、比叡山延暦寺会館、比叡山延暦寺東塔エリア
プログラム
- 日吉大社 特別案内
- 神職(権禰宜・浅井勝直氏)による境内案内、山王祭に関するビデオ視聴と御神輿公開
- 昼食・庭園鑑賞
- 坂本の名店「芙蓉園」2階を貸し切り、昼食会場としてご用意。
延暦寺御用達の「比叡ゆば」を使った特製御膳「比叡ゆば重ね」を中心に、近江ならではの滋味をお楽しみいただきました。
- 坂本ケーブル貸切運行
- 比叡山鉄道(株)西田取締役による車内案内
- 特別講演「延暦寺の神様 仏様」
- 延暦寺会館にて比叡山延暦寺 副執行・星野最宥師による特別講演
- 延暦寺東塔エリア特別拝観
- 比叡山延暦寺 東塔エリアにて星野副執行と信仰の核を歩み、神仏が共に祀られてきた祈りの歴史を静かに辿りました。
講師紹介
名古屋市出身。皇學館大学神道学専攻科を卒業。 平成15年(2003年)に日吉大社へ奉職。 現在は権禰宜・総務課長として神社の運営を担う傍ら、山王祭や、日吉大社の歴史と伝統を現代に伝える活動に尽力している。
東京都出身
大正大学人間学部仏教学科天台学コース卒業
平成13(2001)年延暦寺一山竜珠院住職拝命
根本中堂執事、参拝部主事、法務部主事
令和6年5月延暦寺副執行参拝部長 現在に至る
レポート
京阪沿線にある神社仏閣、地域と連携して、後世に残すべき文化を探る神仏歴史講座・特別体験「京阪沿線社寺巡礼」の第2回目は、大津市坂本にある日吉大社の「山王祭」と、その日吉大社と深い繋がりがある比叡山延暦寺を巡りました。
参加者は23名。地元・滋賀や京都・大阪はもちろん、遠くは東京・岐阜からも駆けつけてくださり、ご夫婦や親子で「祈りの道」をじっくり歩む1日となりました。
神職と巡る日吉大社
集合場所は京阪電車の坂本比叡山口駅からすぐのところにある坂本観光案内所。観光協会の方にガイドいただきながら、日吉大社に向かいました。


日吉大社で出迎えてくださったのは権禰宜の浅井勝直さん。日吉大社山王会館にて日吉大社についての解説を聞いた後、日吉大社のもっとも大切な例祭「山王祭」ついてまとめた映像を鑑賞しました。

全国におよそ3,800社ある日吉・日枝・山王神社の総本宮である日吉大社は今から約2100年前に創建されたと伝えられています。平安時代には、日吉大社が平安京の鬼門にあたるため、都の守り神として信仰されました。また、伝教大師最澄が比叡山延暦寺を開いた際には天台宗の護法神として崇められるようになりました。
そんな日吉大社のもっとも重要な神事が、坂本の春の風物詩にもなっている「山王祭」です。日吉大社の境内には約40のお社がありますが、その中心となるのが「山王七社」、つまり、西本宮、東本宮、宇佐宮、牛尾宮、白山宮、樹下宮、三宮の7社。それぞれの神をのせた神輿が登場し、御祭神が鎮座するまでの物語を再現するのが「山王祭」です。

「山王祭」は3月最初の日曜から4月15日までの約1カ月半にわたって行われます。
最初の神事は「神輿上(おこしあげ)神事」。今年は3月1日に行われました。
日吉大社の御神体山である八王子山(標高381m)山頂の日吉大社のはじまりとされる奥宮に2基の神輿を担ぎ上げる神事で、二柱の神のお見合いを意味しています。
お見合いから1カ月以上が経過した4月12日には「午の神事」が行われます。
「山王祭」では神輿の担ぎ手を駕輿丁(かよちょう)と言いますが、当日松明を持った駕輿丁が生源寺に集結。そこで点呼を受けた後、奥宮へ神輿を迎えに走ります。
「鈴振り」の合図で急な坂と石段から降ろされた神輿は後ろと後ろをつなぎ合わせた形で東本宮の拝殿に奉安されます。これが「尻繋ぎの神事」。神様の結婚を表す神事です。

お見合い、結婚の次は、いよいよ出産。4月13日の夜、若宮誕生を表した「宵宮(よみや)落し神事」が宵宮場(よみやば)で行われます。勢揃いした駕輿丁たちが大政所(おおまんどころ)に奉安された4基の神輿を一斉にゆすり、ゆさぶられた神輿の音は街中に響きわたります。扇の合図で1メートル余りの高さから下に落とします。これが御子神の誕生です。映像でその様子が映し出されると、参加者の皆さんは食い入るように見つめていました。ここで誕生する御子神は賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)。京都・上賀茂神社の御祭神です。
「山王祭」では神仏習合のお宮にふさわしい神事もあります。
4月14日に行われる「申の神事(桂の奉幣)」です。当日は早朝に東本宮、午前10時には西本宮で例祭があります。拝殿に奉安された7基の神輿を前に宮司による祝詞奏上のあと、天台座主の読経が行われます。
比叡山延暦寺創建のころから両者が切っても切れない関係であったことがわかる神事の一つです。
映像はおよそ12分。「山王祭はきちんと理解するのに7年かかると言われていますが、この映像でおおむねご理解いただけたのではないでしょうか」との浅井さんの言葉で締めくくられました。


映像鑑賞後、浅井さんの案内で境内を歩きました。
神仏習合を表すと伝えられている山王鳥居や西本宮の楼門に見える日吉の神の使いとされるサルの彫刻など、一つひとつていねいに解説してくださいます。特に印象的だったのは「下殿」です。国宝にも指定されている西本宮本殿をはじめ、日吉大社の社殿の床下には「下殿」という部屋が設けられています。現在は祈祷場になっていますが、明治時代以前は仏像や仏画が祀られ、宮仕と呼ばれる僧侶によって仏事が営まれていたそうです。


その後は、重文神輿収蔵庫で江戸時代の神輿を見学したり、「山王祭」の際に神輿が奥宮から下されるときに通る石段などの案内を受けたりしながら、境内を浅井さんとゆっくり歩きました。
特別御膳「比叡ゆば重ね」を堪能したら、
日本一長いケーブルカーに乗って比叡山延暦寺へ
浅井さんの案内の後は、また坂本観光協会のガイドを聞きながら、山王祭の重要な舞台である「宵宮場」を経て、昼食会場へと向かいます。 場所は名勝庭園が楽しめる芙蓉園。本企画のための特別御膳「比叡ゆば重ね」を楽しみました。

3段重ねの重箱は坂本のシンボルともいえる穴太衆の石積みをイメージしたもの。お重の中には比叡山延暦寺御用達の比叡ゆばの製造元であるゆば八の「比叡ゆば」を使った「鮭のゆば包み」や、滋賀県名物「本モロコの酢味噌和え」、「山王祭」で振る舞われる「さば寿司」などが目にも鮮やかに盛り付けられていました。
参加者の皆様の中には食事を楽しんだ後、芙蓉園の庭園を鑑賞しながら歩いている方もありました。
坂本観光協会の杉本会長より4月の山王祭・桟敷席のご案内をいただいたところ、その日のうちに申し込まれた方もいらっしゃったようで、まさに地域と参加者が直接繋がった日になりました。


昼食後は貸切の坂本ケーブルに乗って比叡山延暦寺へ移動しました。
比叡山鉄道の西田取締役も同乗し、駅舎の歴史やケーブルカーの仕組み、車窓からの景色の見どころなどを楽しく解説してくださいました。
坂本ケーブルは日本一長いケーブルカーで、全長2,025メートル。「年々山の木が育ってくるので、びわ湖が見えにくくなっているのですが…」と西田さんが仰いましたが、当日は天気も良く、車窓からも綺麗なびわ湖が見えました。


乗車時間は11分。ケーブル延暦寺駅に到着すると、坂本にいたときよりも空気がひんやりと感じられました。「3度から5度くらいの気温差が多いですが、今日は7度低かったですね」。西田さんの説明を聞きながら、参加者の皆さんは思い思いの場所からびわ湖の眺めを楽しみました。

比叡山延暦寺の神様 仏様
ケーブル延暦寺駅から10分ほど歩くと、比叡山延暦寺に到着します。
延暦寺会館の2階ホール「比叡」で、このツアーのための特別講演が行われました。講師は延暦寺副執行・星野最宥さんです。テーマは「延暦寺の神様 仏様」。山内にある神仏習合の時代のことがわかる場所を教えていただきました。
唐から仏教を学んで帰国した伝教大師最澄が開いた比叡山延暦寺はその後、日本仏教を開く多くの僧侶を輩出した、いわば日本仏教の聖地。そんな比叡山に、神を感じる場所がたくさんあることをプロジェクターに映し出された画像とともに解説いただきました。
参加者の皆さんは配布されたレジュメにメモを取るなど、熱心に聞き入っておられました。

星野さんは、たくさんのスポットを紹介してくださいました。
中でも印象的だったのは、比叡山延暦寺の総本堂・根本中堂の中庭にある竹台。竹は最澄が唐から持ち帰ったもののひとつで、向かって左側の竹台は筠篠(いんじょう)と呼ばれ、日本国中の神々を勧請しています。
右側の竹台は叢篠(そうじょう)と呼ばれ、日吉大社に祀られている山王七社の神が祀られているそうです。現在、根本中堂は「平成の大改修」が行われており、この2つの竹台を見ることができませんが、星野さんの見せてくださった写真がとてもわかりやすく、神様が本堂の前に祀られていることに驚く参加者の方の姿も見られました。


また、学問の神として知られる菅原道真を祀る神社も比叡山内にありました。
登天天満宮と呼ばれ、2024年に改修された新しい社です。菅原道真は右大臣だったときに、左大臣の讒言により太宰府に左遷され、失意のまま亡くなりました。そのため、道真の魂は荒ぶる神となっていました。それを鎮めたのが第13代天台座主尊意和尚。和尚が諭したことにより、道真は天に登っていったという言い伝えから建てられた社です。
毎年、この社の前で神事と法要が行われており、落慶から10年目には神楽の奉納も予定されているそうです。

会館での講演のあとは、特別巡礼「副執行と巡る東塔エリア」と題して、星野さんと一緒に東塔境内を歩きました。星野さんの軽妙な語り口に、参加者の皆さんも引き込まれ、笑ったり感心したりと楽しいひと時でした。
巡礼の中では、改修中の根本中堂に設けられた修学ステージも見学。高いところにあるので、根本中堂の屋根や蟇股などが良く見えるのですが、今年12月には解体されるため、その後はもう見られなくなります
参加者の皆さんは貴重な景色を熱心に写真に収めていました。


その後は、延暦寺創建時から守り継がれている「不滅の法灯」と御前立ちもお参りしました。こちらも根本中堂の改修に伴い、現在は萬拝堂に祀られています。「不滅の法灯」と御前立ちが間近で拝める貴重な機会。みなさんは静かに手を合わせていらっしゃいました。
他にも稲荷神を祀る星峰稲荷社や山王社などを巡拝。ひと通りご案内いただいたところで解散となりました。
今回の旅で生まれた「巡礼の輪」。参加者の皆さんからは「今度は家族や友人を連れて、また別の季節にここを案内したい」という心強いお声をいただきました。

ご紹介いただいた「山王祭」は、4月12日(日)〜15日(水)にクライマックスを迎えます。春の陽気に包まれた日吉大社で「山王祭」を体感した後は、日本仏教の聖地での神仏の協奏を感じてみてはいかがでしょうか。
山王祭
(さんのうさい)
日吉大社の例大祭である山王祭は、大津祭、長浜曳山祭と並び「湖国三大祭り」の一つに数えられ、比叡山の護法神として神仏習合の信仰を集めてきた歴史を持ちます。
神様の誕生から結婚、そして神輿を激しく揺さぶる「宵宮落し」に至るまで、生命のエネルギーを荒々しいまでに再現する勇壮豪快な神事です。比叡山の神様と琵琶湖の神様の出会いから始まったこの祭りは、今も坂本の地に伝わる祈りの原点です。
- 日時
- 2026年 4月12日(日)・13日(月)・14日(火)
- 会場
- 日吉大社、坂本周辺
(京阪電車「坂本比叡山口」駅)
