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|継ぐコラム|2024/02/08

京阪沿線 継ぐコラム Vol.3-1

ひかる恋を継ぐ《宇治色ノ巻》

それは、“世界最古の恋の教科書”かもしれません。平安時代に書かれた「源氏物語」は、恋愛小説の元祖としていまも多くの人に愛され、世界中で読み継がれています。そこに描かれているのは、季節の自然や色を楽しむ豊かな生き方、ずっと変わらない恋心。もっと身近に生き生きと、いま注目の平安ワールドを感じたくて。宇治発のひかる恋を継ぐおでかけへ、京阪電車で出発です。

美しすぎる理想郷。

「この平等院の地が藤原道長の別荘だった頃は、彼に雇われていた紫式部も来ていたかも」。そう教えてくださるのは、山本淳子先生。紫式部によって書かれた源氏物語の研究家として、そして、世界30以上の国や地域にいるファンのひとりとして、何度も宇治を訪れています。

  • 平等院

  • 平等院

「当時の宇治は、京都から片道1日かけておでかけを楽しむ別荘地。牛車や舟にのる道中も、歌を詠んで楽しんでいたとか」。そんな優雅な時代を象徴するような鳳凰堂ですが、いま私たちが見ているのは別荘ではなく、道長の息子である頼通が建てた寺院。「“すてきな極楽に導かれたい!”というあの世への憧れが強かったことが、物語からもうかがえます」。

伝説の鳥である鳳凰が翼を広げたような美しいお堂、その姿を水面に映す阿字(あじ)池や庭園。この世のものとは思えない理想郷をつくりあげた平安の人々は、それほどまでに死を恐れていたのでしょうか、それとも、現世に疲れていたのでしょうか。

「気楽に遊びくらしていたと思われている貴族ですが、政治の世界で力を持つために、自分や子どもの結婚を利用してライバルと闘っていた一面も。愛と打算の間で揺れたり、報われない恋に身を焦がしたり。いまの私たちと何も変わらない。だからこそ、愛読されつづけているんです」。

そんな奥深い物語のフィナーレを飾るのが、宇治を舞台にした10の物語。「すぐ目の前の宇治川の中州にかかる橋を渡れば、まさに物語の中にいる気分になれますよ」と、ほほ笑む先生。恋したい人も、恋するふたりも、宇治で永遠のラブストーリーを楽しんでみませんか。

  • 平等院

  • 平等院

  • 平等院

    写真提供:平等院

平等院

光源氏のモデルのひとりとされる平安貴族のトップ、藤原道長の元別荘だった寺院。当時の人々にとって憧れだった極楽浄土を表現した鳳凰堂や庭園は、現代でも圧倒的な美しさです。ご本尊の阿弥陀さまのまわりを舞い踊る、かわいい彫刻の菩薩たちに間近で会えるミュージアムも必見。

色いろに、縁結ぶひも。

ひかる恋を探して、平等院から宇治川を渡った先の路地で名店を発見。
『昇苑くみひも』は、伝統ある京くみひもの技を継承し、現代のくらしにあうスタイルで発信しているお店です。
結んだり、束ねたり、センスよくアレンジされた商品は、手づくりで仕上げた一点もの。なかには平安貴族のファッション、色の「かさね」を表現した芸術品のようなカードケースも。
源氏物語「総角(あげまき)」の巻では、主人公が恋する相手との“縁結び”を願ったくみひも。その魅力にじっくりハマってみたい方は、お店の奥座敷で一からくみひもアイテムをつくれる「手組み体験」もおすすめです。

  • 昇苑くみひも 宇治本店

  • 昇苑くみひも 宇治本店

  • 昇苑くみひも 宇治本店

  • 昇苑くみひも 宇治本店

  • 昇苑くみひも 宇治本店

昇苑くみひも 宇治本店

町家を改装したスタイリッシュな空間、アートのように美しいストラップやインテリアなど、くみひもの新しい魅力を発信する現代的なセンスあふれるお店です。「いまの時代にあった使い方で自由に楽しんでもらいつつ、伝統の技や美を守りたい」との願いから、くみひも作りの体験や教室も開催。

  • おすすめ商品:正絹(しょうけん)ストラップ:1,320円、正絹カードケース 襲色目(かさねのいろめ):11,000円

    ※「手組み体験」2,500円は完全予約制

  • 10:00~17:00
    なし(年末年始をのぞく)
  • 0774-66-3535
  • 宇治駅下車 南西へ徒歩約10分 MAP
  • 詳しくはホームページをご覧ください

お皿の上で庭園デート。

つづいては宇治で外せない、ひかる恋スポットへ。
楽しく物語の世界を体感できる『宇治市源氏物語ミュージアム』、その一角にある『雲上茶寮』は、日本茶の専門店が手がけるスタイリッシュなカフェです。
とくにこだわりの逸品が、洲浜(すはま)や石を季節のムースやジェラートでかたどった「庭園パフェ」。「こんな庭を憧れの君と歩きたい…」と、食べる前からため息が出る美しさです。
水出し玉露とのマリアージュを楽しみつつ、中に詰め込まれたゼリーやシフォン、白玉…と味の散歩を満喫した後は、源氏物語ファン必見のおみやげスペースもお見逃しなく。

  • 雲上茶寮(宇治市源氏物語ミュージアム内)

  • 雲上茶寮(宇治市源氏物語ミュージアム内)

  • 雲上茶寮(宇治市源氏物語ミュージアム内)

  • 雲上茶寮(宇治市源氏物語ミュージアム内)

  • 雲上茶寮(宇治市源氏物語ミュージアム内)

雲上茶寮(宇治市源氏物語ミュージアム内)

平安朝の文化を体感できる「源氏物語ミュージアム」内のカフェで、人気なのが「庭園パフェ」。季節がわりのムースやジェラート、ゼリーが詰め込まれた庭園パフェは、水出し玉露にもあう繊細な味わいで、「こんな庭であの人と散歩したい…」と妄想をかきたてられます。おみやげには源氏物語モチーフのクッキーも。

  • おすすめ商品:庭園パフェ:1,580円 、玉露 薫:990円、お茶クッキー 紫(左)・藤(右):各980円
  • 9:00~16:30(L.O.)
    月曜(祝日は翌日)休業
  • 0774-34-0466
  • 宇治駅下車 東へ徒歩約10分 MAP
  • 詳しくはホームページをご覧ください

物語で占う恋のゆくえ。

ひかる恋に導かれて、ここからは京都市内へ。
下鴨神社の『糺の森』といえば、あの光源氏も大切な場面で訪れて神に願いをかけた、古くからのパワースポット。参道にひっそりたたずむ『相生社(あいおいのやしろ)』も、じつは由緒ある縁結びのお社で、授与所には心ときめく絵馬やお守りがずらり。
とりわけ「男性向けと女性向けがあるなんて珍しい!」と人気のおみくじは、源氏物語54巻と同じ数だけ種類があり、それぞれの歌にちなんだ恋のアドバイスをいただけます。ちなみに、絵馬などの奉納には特別なお作法があるので、ぜひホームページをご参考に。

  • 相生社 あいおいのやしろ(下鴨神社)

  • 相生社 あいおいのやしろ(下鴨神社)

  • 相生社 あいおいのやしろ(下鴨神社)

相生社 あいおいのやしろ(下鴨神社)

縁結びで有名なお社があるのは、光源氏も物語のなかで訪れた「糺の森」。ご神木に見守られておみくじを引けば、源氏物語54巻それぞれの和歌をもとにした「出会い」や「交際」のアドバイスがいただけます。平安装束をかたどったデザインも、恋のお守りにしたくなるような愛らしさ。

千年前から継ぐ、にぎわい。

今回のひかる恋を継ぐ旅の終わりは、だれもが知るあの名所。
『清水寺』は、今のように大きな舞台がつくられる前から、人々に厚く信仰されてきたお寺。より多くの人を受け入れるためにお堂や舞台が広くなっていった、という説もあるそうです。
夜中でも明るかったというそのにぎわいが、源氏物語の中では主人公のさびしさを引き立てるために描かれています。貴族から庶民まで、様々な人が行き交っていた参道や境内に、いまは世界中から多くの人々が。千年という時の流れを感じながら、ちょっと新鮮な気分でおまいりしてみませんか。

  • 清水寺

    写真提供:清水寺

  • 清水寺

    写真提供:清水寺

  • 清水寺

    写真提供:清水寺

  • 清水寺

    写真提供:清水寺

  • 清水寺

    写真提供:清水寺

清水寺

奈良時代に創建された「清水寺」は、源氏物語をはじめ多くの平安文学に登場する、当時の大人気おでかけスポット。現世でのくらしの願いをかなえてくれる観音さまへのおまいりが、一大ブームになっていたとか。千年前からにぎわっていた境内や参道を歩けば、自分も歴史の一幕に入り込んだ気分を味わえます。

宇治からはじまって、京都市内へ。さらにまだまだ広がりそうな、ひかる恋をめぐる旅。ひとつひとつの場所で見つけた恋の面影が、新しいときめきとなって、あなたとこの街の物語へと継がれますように。

さて、つぎはどんな“継ぐ”に出会えるでしょうか。

ひかる恋を継ぐ《大津色ノ巻》も、ぜひご覧くださいね!

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