
第211回
京都と味噌

第211回
京都と味噌

京阪的京都ツウのススメ
第211回 京都と味噌
京の食文化を支える味噌
味噌は、平安時代に都の人々も口にしていた発酵から生まれる旨味と香りが特徴の調味料。
味噌の歴史や、京の味とも言われる白味噌についてらくたびの谷口真由美さんがご紹介します。
味噌の基礎知識
其の一、
味噌は、大豆・米・塩などを原材料とする発酵調味料です
其の二、
平安時代、味噌は贈答品としても使われる高価なぜいたく品でした
其の三、
まろやかな甘みの白味噌は京料理や名物菓子に使われています
平安時代は高価だった味噌
味噌は、大豆を主な原材料に、塩や麹(こうじ)を加えて発酵させた、旨味のある調味料です。そのルーツは、醤(ひしお)という肉・魚・穀物などを塩漬けにした古代中国の発酵食品だと言われています。味噌という文字が最初に文献に登場したのは平安時代ですが、今とは違う形状だったと考えられています。当時、味噌は高価で官僚の給与や贈答品にも使われていました。具入りの汁に味噌を溶かした味噌汁は、鎌倉時代に作られるようになりました。
京料理や名物菓子に使われる白味噌
味噌は、熟成期間や原材料によって味や色に違いが生まれる、地域色豊かな調味料です。京都をはじめ西日本で広く使われている白味噌は、赤味噌に比べて塩分が少なく熟成期間が短いのが特徴。まろやかな味わいで淡いクリーム色を帯びています。懐石料理や精進料理、おばんざいなど様々な京料理に使われるほか、白味噌を餡やタレに使った京名物の菓子もあります。白味噌は、京の食文化を形作ってきた調味料と言えるでしょう。
日本で独自に作られた調味料 未醤から味噌へ
古代中国から伝来した発酵食品の醤は、日本で独自に改良され、「未だ醤にならないもの」という意味の未醤と呼ばれる発酵食品が生まれました。この未醤が、後に味噌になったと考えられています。
味噌が文献に初めて登場するのは平安時代。歴史書『日本三代実録』に、朝廷が僧に味噌を支給したと書かれています
時代とともに変化する食べ方
平安時代
味噌だけでなめて味わったり、食べ物に付けて食べていました。

鎌倉時代
味噌をすり鉢ですり潰す調理法が広がり、潰した味噌を水で溶く「味噌汁」が誕生。ごはんに味噌汁をかける、汁かけ飯も定着しました。
室町時代
公家の間では味噌汁を味わい、酒を酌み交わす会食が楽しまれていました。

室町時代
公家の間では味噌汁を味わい、酒を酌み交わす会食が楽しまれていました。
戦国時代
たんぱく質が豊富な味噌は、栄養食品の役割も担いました。武士は長期保存可能な味噌を携帯して戦場に向かったそうです。
江戸時代
味噌を取り入れた食生活が庶民の間に定着しました。
甘みと淡い色が持ち味 京の白味噌

出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
味噌は、原材料の違いによって、米味噌・麦味噌・豆味噌などに分けられ、塩や麹の量によって、甘味噌・甘口味噌・辛口味噌に分類されます。京都の白味噌は、米味噌の甘味噌にあたります。

出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
まろやかな味わい
白味噌は米麹の量が大豆に対して2倍程度と多く、米麹に含まれる糖分が甘みのもとになります。
短期間の熟成で淡い色に
一般的な辛口の米味噌は半年以上熟成させますが、白味噌の熟成期間は短く、1週間から10日間ほど。熟成に伴い生じる色の変化はほとんど無く、淡いクリーム色のままです。
味噌造りには、大豆を洗ったり茹でたりする工程があり、水質の良さも重要になります。「石野味噌」(下京区)では、江戸時代中期の創業以来、石井筒(いしいづつ)と呼ばれる名水を味噌造りに使用しています
味の決め手は白味噌 様々な京の味
白味噌の風味や香りを生かした京名物をご紹介します。
あぶり餅

あぶり餅は、今宮神社(北区)の門前菓子。ひと口大の餅を炭火であぶり、白味噌ダレを絡めて仕上げます。甘くまろやかなタレが、餅の香ばしさを引き立てます。
花びら餅・柏餅

正月用の和菓子・花びら餅は、白味噌餡や甘く炊いたゴボウを、餅や求肥(ぎゅうひ)で包んだもの。こどもの日に食べる柏餅にも、上品な甘さの白味噌餡を使ったものがあります。
味噌漬け

白味噌に銀ダラやサワラ、アカウオなどを漬けた味噌漬けは、味噌のまろやかな甘みと程良い香ばしさが食欲をそそります。
松風

松風は、小麦粉や砂糖、麦芽飴に白味噌を合わせた生地を発酵させて焼き上げた菓子。ほのかに白味噌の風味が感じられます。
柚子(ゆず)味噌

ユズと白味噌から作る柚子味噌は香りが良くなめらかな調理味噌。ふろふき大根や田楽に使われます。
お茶を味わうために用意される一汁三菜を基本とした茶懐石の椀物には、季節によって白味噌や赤味噌を使い分けます。冬にはまったりとした白味噌がよく用いられます

ナビゲーターらくたび 谷口 真由美さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2026年03月
