2026/04/01
時代を越えて心に響く舞台を観に 伝統芸能の世界
華やかさに心躍る歌舞伎、静かに胸を打つ能、クスッと笑える狂言。どこか難しそうに感じる伝統芸能ですが、実は現代の私たちの心に響く魅力が詰まっています。知れば知るほど面白い、奥深い伝統芸能の世界へご案内します。

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江戸時代に生まれ、庶民からも愛され続ける歌舞伎。花道からスター役者が登場し、時には舞台が回転するなど迫力ある演出が魅力です。一方で、衣裳や所作、舞台装置や音楽に至る様々な部分で受け継がれてきた演出上の「型」があります。華やかさの中に磨き抜かれた様式美が光る舞台芸術です。


2024年5月南座『相生獅子』姫 上村吉太朗
写真提供:松竹歌舞伎は女性が舞台に立つ事がないため、男性が女性を演じる「女方」という独自の役どころが生まれました。女方は単に女性を模倣するのではなく、立ち姿や指先の動き、目線や着物の着方まで細かく計算し、理想の女性像を描きます。女性が演じれば生々しくなりがちな場面も上品な色気へと変え、激情型の人物でさえ優美に見せます。
2024年5月南座
『相生獅子』姫 上村吉太朗
写真提供:松竹

ワイヤーでつるされた役者が客席の上を飛ぶ「宙乗り」は、劇場内が歓声に包まれる1番の見せ場です。実は江戸時代から続く伝統的な演出で、このような大胆な仕掛けは外連(けれん)と呼ばれます。他にも本物の水を使ったり、衣裳が一瞬で替わったり、役者と裏方が息を合わせ、知恵と熟練の技が作り出す演出も多数。まさに和製マジックです。

隈取(くまどり)は、顔の筋肉や血管を強調する独特の化粧法。ヒーローは赤、悪人は藍など、顔を見れば敵か味方かがひと目でわかります。女方も、老女や既婚女性なら眉を描かず、気の強い役ならつり上がった眉にするなど、役柄に応じて印象を変えます。役者自身がどう見せたいかを考えながら化粧し、身分や性格までを化粧で表現します。


歌舞伎はもともと屋外で上演され、舞台上にのみ屋根がありました。観客は芝生などに座って楽しんだことから「芝居」という言葉が生まれたとも言われています。京都・南座の唐破風(からはふ)の屋根はその名残。やがて劇場全体に屋根がつき、現在の姿へと発展しました。

歌舞伎の劇場で唯一南座に現存する舞台上部の唐破風

2001(平成13)年生まれ。6歳の時に『傾城阿波の鳴門』お鶴役で初舞台。2022年度「咲くやこの花賞」受賞。古典作品をはじめ『刀剣乱舞』膝丸役などの新作歌舞伎にも出演する今注目の若手俳優。
男性でも女性でもない
「女方」への憧れ私が初めて歌舞伎に出会ったのは4歳のとき。『藤娘』の演目を観て、男性が女性を演じる姿に「こんな世界があるんだ」と心を奪われました。当時は物語の内容まではわかりませんでしたが、可憐(かれん)で美しい女方との出会いが歌舞伎を好きになった原点です。
難しく考えず、
感じるままに楽しんで400年以上も受け継がれてきた歌舞伎は、時代が変わっても日本人の感性に響く何かがあるからこそ続いてきた芸能です。セリフがわからなくても、音楽や舞台の空気感に心が動く瞬間がきっとあるはず。舞台を観る時の服装も普段着で大丈夫ですので、まずは知っている役者の公演から観るなど、気軽に足を運んでみてください。


西洋料理家ふじい
吉太朗さんが幼少期から通うイタリアン。シンプルな味付けで、コースは5,500円から。名物「アルフレードのフェットチーネ」とメインの「牛フィレのカツレツ」がおすすめだそう。

- 16時~22時(L.O.)
※店主ひとりで営業のため来店前に要TEL、ランチは予約営業
水曜(4/29・5/6は除く)休業 ※ほか不定休あり - 16時~22時(L.O.)
※店主ひとりで営業のため - 来店前に要TEL、ランチは予約営業
- 水曜(4/29・5/6は除く)休業
※ほか不定休あり - 075-561-3301
- 京都市東山区祇園町北側347-161
MAP - 祇󠄀園四条駅下車 北東へ徒歩約10分
南座
歌舞伎発祥の地・京都にある、日本最古の歴史を誇る劇場。純和風の外観とモダンな館内が調和した建築美が、国内外で評価されています。
- 075-561-1155
- 京都市東山区中之町198MAP
- 祇󠄀園四条駅下車すぐ

劇場前の大提灯は毎年12月に開催される「吉例顔見世興行」で新調されます
南座 歌舞伎鑑賞教室
歌舞伎の魅力や見どころの説明の後、実際の舞台を鑑賞できる初心者向けの人気企画。演目『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』は、立役の豪快さと女方の気迫がぶつかり合う、荒々しくも華やかな作品です。
- 5/15(金)~24(日)
11時・14時30分
※土・日曜は13時30分・17時
5/18(月)休演 - 詳しくはホームページをご覧ください
- 4,000円

- 16時~22時(L.O.)
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能は狂言とあわせて「能楽」とも呼ばれ、約700年続く現存最古の仮面劇です。舞台に大きなセットはなく、月や波の音も役者の動きや謡で表されます。その余白を想像力で味わう、静かで奥深い芸術です。


能の舞台では、月の明かりも虫の声も、シテ(主役)の動きや声、音楽によって表されます。役者が空を仰ぐ様子と音楽を通し、観客は心の中に情景を思い描きます。能の音楽は声による「謡」と笛や鼓などの「囃子」から成り、指揮者はいません。互いの呼吸や間合いを感じ取りながら、ひとつの世界をともに作り上げていきます。


能は神事との結びつきが深く、神や鬼、亡霊、精霊など人ではない者が主人公となる曲(演目)が多くあります。中でも「夢幻能」は、故人が旅の僧の前に現れてこの世への未練や悲しみを語る能の形式のひとつ。僧の夢の中の出来事として描かれることも多く、夢か現(うつつ)か、過去か現在か、その境界がゆらぐ不思議な世界へ誘ってくれます。


能で用いられる仮面は「面(おもて)」と呼ばれ、翁面(おきなめん)や女面(おんなめん)、鬼神面(きじんめん)など多様な種類があります。能面をわずかに上げれば喜びに、伏せれば悲しみの表情に見えるその繊細な変化は、能楽師の身体の動きと一体となって生まれます。ごく微細な所作によって、能面に宿る役柄の心が浮かび上がるのです。

1993(平成5)年生まれ。13歳の時に『経正』で初めてシテ役に。海外公演にも多数参加。
静かだからこそ感情が際立つ
能は静かで難しいと思われがちですが、派手な演出がないからこそ、登場人物の嫉妬や未練、後悔といった感情が真っすぐ伝わってきます。例えば『葵上(あおいのうえ)』では、静かな語りが次第に怒りへと変わり、やがて般若(はんにゃ)の面で激しい感情を表します。静かで張り詰めた舞台だからこそ、主役の心の揺れがいっそう鮮明に感じられます。
無理に理解しようとせず、
想像することを楽しんで能の言葉は室町時代の日本語なので、今では聞き慣れない表現があります。また、起・承で終わる曲もあります。まずはすべてを理解しようとせず、舞台の空気を感じてください。声が高ければ「うれしいのかな」、低ければ「悲しいのかな」と想像し、登場人物の気持ちに自分の経験を重ねながら観ていただきたいです。

urarobata
麗晃さんと店主は約10年の付き合い。鹿児島県産知覧鶏を備長炭で炭火焼きした「鶏もも焼き/1,078円」や鮮度抜群のお造りが人気。

- 17時~0時30分(L.O.)
※フードは0時(L.O.)
※日曜は23時30分(L.O.)、フードは23時(L.O.)
不定休 - 06-6227-8777
- 大阪市中央区高麗橋1-2-4
MAP - 北浜駅下車 南東へ徒歩約5分

- 17時~0時30分(L.O.)
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狂言に登場するのは、主人や召使い、夫婦など、どこかで見たことがあるような人々。日常で起こりそうな出来事を、テンポの良い会話で描き、コントのような面白さがあります。人の欲や愛嬌といった人間臭さが詰まった喜劇です。


狂言にたびたび登場するのが、主人に仕える召使い「太郎冠者(かじゃ)」。失敗したり嘘をついたりして物語を動かす存在です。太郎冠者の性格は作品ごとに様々ですが、どの太郎冠者にも共通するのは、無邪気に喜怒哀楽を見せる、明るく憎めない人柄ということです。


物語には擬人化された蚊や猿、キノコの精などが登場し、舞台で思わぬ存在感を放つこともあります。蚊が相撲を取ったりキノコが屋敷中に生えたりと、ユニークな展開も見どころのひとつ。権力のある大名が、彼らに翻弄(ほんろう)される構図も狂言ならではの面白さです。



1972(昭和47)年生まれ。3歳の時に『以呂波』のシテ役で初舞台。2008(平成20)年度「京都府文化賞奨励賞」受賞。2024年度「京都府文化功労賞」受賞。
共感しながら楽しめるのが
狂言の魅力狂言の物語には、登場人物の太郎冠者(かじゃ)がお使いで失敗して主人に怒られたり、夫婦喧嘩が大騒動に発展したりと、私たちにとって身近な出来事を面白おかしく描いているので、役に共感しながら楽しむことができます。私の好きな『千鳥』は太郎冠者と酒屋の主人の駆け引きが見どころで、話芸と舞という、狂言の魅力がたっぷり味わえる一曲です。
予備知識なしで大丈夫。
コントを観に行く感覚で楽しめます狂言は1曲20分ほどと短く、物語もわかりやすいのが特徴です。聞き慣れない言葉は出てきますが、予備知識なしで観た方が、素直に笑えるかもしれません。解説付きの回もあるので、初めてでも気軽に楽しんでください。

山本能楽堂
オフィス街にたたずむ、黒光りの舞台が美しい能楽堂。約100年の歴史を持つ国登録有形文化財で、観客参加型企画なども充実しています。
- 06-6943-9454
- 大阪市中央区徳井町1-3-6MAP
- 天満橋駅下車 南西へ徒歩約10分





