京阪電車の騒音・振動低減

列車が運行することにより、騒音や振動が発生することは避けられません。京阪電車では、環境方針における重点実施項目のひとつとして「鉄道騒音・振動の低減」を掲げ、さまざまな施策を実施することにより、沿線環境の改善や快適な車内空間づくりに取り組んでいます。

防音車輪

曲線通過時にレールと車輪の摩擦により発生するキシリ音を低減するために、京阪線・大津線の全車両にゴムリングを車輪にはめ込んだ防音車輪を採用しています。防音車輪は従来の車輪より15〜20dB程度の騒音低減効果があります。

増粘着材噴射装置

増粘着材噴射装置

雨天時はレール上に水の膜ができるため、晴天時に比べ、車輪とレール間の摩擦力(粘着)が小さくなります。この装置は、車輪とレールの間に極少量の増粘着材(アルミナ)を噴射することで車輪とレール間の摩擦力を大きくし、車輪の空転や滑走を抑制する装置です。これにより、騒音や振動の原因となる車輪損傷の発生を抑制することができます。
なお、この増粘着材は土壌成分と同種の物質のため、環境破壊の原因にはなりません。3000系先頭車両に積載しています。

車輪踏面異常時の車輪旋削

車輪旋削

列車の運行による車輪の摩耗で乗り心地が悪化したり、車輪とレールの接触による疲労傷や摩擦傷、またはブレーキをかけるための部品「制輪子」との摺動で発生する傷などにより、騒音や振動が増加する場合があります。そのため、寝屋川車両基地では車輪踏面の形状を正規の踏面形状に戻すため車輪とレールが接する面を削正し、滑らかにすることで、快適な乗り心地と騒音・振動を低減しています。

フラット検出装置

フラット検出装置

線路上に設置している「フラット検出装置」は通過列車の車輪踏面の不具合を自動的に車輪単位で早期に発見するための装置です。全通過列車の車輪振動および騒音データの中から、基準値を超える車輪の削正手配を速やかに実施し、乗り心地の改善や走行騒音の低減を行っています。

CFRP製パンタグラフ

架線とパンタグラフの集電舟との摩擦により発生する騒音を低減するため、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の集電舟を採用しています。従来のアルミ製集電舟に比べて架線への追従性が高いという特長があり、構造の見直しによる相乗効果で音圧レベルを低下しています。

分岐器改良およびロングレール化

弾性ポイント

レールには継目があり、継目の上を列車が通過すると騒音と振動が発生します。これらを低減するために、分岐器においては構造的に継目を有する関節ポイントから、継目を有しない弾性ポイントへの改良を行い、また、一般軌道においてはレールの継目を溶接し、継目を無くすロングレール化などを進めています。これらにより、騒音・振動低減や乗り心地の改善にも効果があります。

レール頭頂面の削正

レール削正車

2001年より16個の削正砥石を搭載した保守用車(レール削正車)を導入し、レール頭頂面傷や凹凸を除去することで、騒音・振動を低減しています。

線路の整備(道床突固め作業)

マルチプルタイタンパー

レール、まくらぎ、砕石で構成されるバラスト道床軌道は、日々の列車走行により少しずつ上下左右方向に歪みます。この歪みを保守用車(マルチプルタイタンパー)で正しい位置に復元し、同時にまくらぎ下の砕石を突き固めることによって、騒音・振動の低減や乗り心地の改善を図っています。

道床交換工事

道床交換作業

バラスト道床に用いる砕石は、長期の使用により細粒化や劣化で機能が低下し、軌道整備後の良好な状態を長く保てなくなります。道床交換工事により新しい砕石に入れ替えることで、騒音・振動低減や保守周期の延伸に効果があります。

散水装置などの設置

散水装置

急曲線や急こう配が多い大津線では、車庫内を含む線内9カ所に散水装置を設置。さらに、京阪線・大津線の一部車両に塗油装置を設置しています。これらの装置の設置により、レールと車輪の間で発生するキシリ音を低減させることができ、列車運行の低騒音化を実現しています。