こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.52]つどいも、笑顔も、交わりも。えきから始まる ~樟葉駅前に生まれた地域と共創する舞台が動き出した~

2024年5月11日、樟葉駅前に天然芝の広場が誕生しました。これは、沿線の再活性化を目指して、駅を拠点として魅力あふれるまちを創造していこうという京阪グループの「えきから始まるまちづくり」プロジェクトの一つです。地域との「共創」をテーマに、共に創り、共に楽しむことのできる、可能性に満ちた駅前空間が誕生するまでの舞台裏と関係者の想いをレポートします。

「ハピネスパーク KUZUHA
グラススクエア」で
目指すこと

リニューアル前の駅前広場
■リニューアル前の駅前広場

かつての樟葉駅前広場は噴水のあるパブリックスペースでした。しかし、噴水は老朽化により停止し人々が通過する空間になっていたため、京阪グループでは2021年頃から「ここに市民の皆さまや、くずはモールにお越しのお客さまがにぎやかに集える広場をつくりたい」と検討を始めていました。その際に大切にしたのは、まちづくりにつながる広場にしたいという想いでした。このまちに住む人の誇りになり、住み続けたい、あるいは移住したいと思ってもらうきっかけとなる、そして樟葉の新しいシンボルになる広場を目指そうと関係者は立ち上がりました。

voice

“樟葉のまちの価値向上に
つながるような発信を
地域と共に創り上げる”

  • 株式会社京阪流通システムズ<br>ファシリティマネジメント部 共創推進室 企画開発部 成長推進室 取締役 熊代美徳さん

  • 株式会社京阪流通システムズ
    ファシリティマネジメント部 共創推進室
    企画開発部 成長推進室
    取締役 熊代美徳さん

我々「共創推進室」は、京阪グループはもとより行政、他企業、そして地域の皆さまと垣根を超えて共に創造してまちづくりにつなげていくことを目的とする部署です。今回の樟葉駅前広場の再整備についてもハードを整備して終わりではなく、芝生広場をつくってその後どのように運営していくか、どのような目的で運営していくかに重きを置いて企画・開発しました。
樟葉を愛するさまざまな立場の皆さまと運営を共にすることで、単なる足し算に終わらない掛け算の効果を生み出しながら、新しい価値の創造を目指していけたらと考えます。樟葉駅前広場を利用していただき、お住まいの方々に楽しい思い出や忘れられない記憶が積み重なれば、「樟葉に住んでよかった」と思っていただけます。樟葉の良い心象が増すほどに、次の世代、さらにその次の世代まで住み続けたいと思っていただけるでしょう。また、魅力的なモノ・コトをこの広場からどんどん発信できたら他都市に住んでおられる方も樟葉を住みたいまちとして選択していただけるかもしれません。そうしたきっかけをつくることは、すべて樟葉のまちの価値向上につながっていきます。目先のことではなく、10年後、50年後に樟葉が持続してよい街であり続けるような仕掛けを、たゆまず行っていきたいと考えています。

枚方市議会「樟葉駅前広場の環境整備について」より引用 ※枚方市議会「樟葉駅前広場の環境整備について」より引用

実現に向けて枚方市と
包括連携協定を締結

再整備の実現へ向けてはいくつもの課題がありました。樟葉駅前は枚方市の所有地のため、京阪グループだけでどうにかできるものではありませんが2022年5月、京阪グループと枚方市は樟葉駅前の再整備を含む環境問題や少子高齢化対策など共通の課題に対して公民連携して取り組むことに合意し、包括連携協定を締結。これによって樟葉駅前の再整備も枚方市と協働して開発していくことになりました。

“TOMONIWA ~ともにわ。~”
に込めた想い

TOMONIWA~ともにわ。~

どのような広場に整備すべきか。樟葉駅前広場が地域の皆さんにとってどのような存在になれば良いか、チームで何度も検討し、編み出したコンセプトが“TOMONIWA~ともにわ。~”です。まるで友だちのように気兼ねなく親しむことができて、いつでも気軽に訪れられる身近な庭。イベントに参加する演者さんや出店者さん、集う方々が共に楽しみや喜びをつなぎあい、みんながここでつながるオープンな庭。さらに、ここに集う人の輪が広がって、共有した時間や思い出が年輪のように重なっていく、地域に欠かせないシンボリックな庭。そんなさまざまな想いが、このコンセプトには詰まっています。

天然芝を敷き詰めたリニューアル後の駅前広場
■天然芝を敷き詰めたリニューアル後の駅前広場

駅前に天然芝の広場ができた!

再整備にあたっては、路面温度の上昇抑制も課題の一つでした。天然芝を敷き詰めることにより地面の温度上昇を抑えるという機能を果たすとともに、幅広い世代が毎日の暮らしの中で気持ちよく過ごせる場所、楽しく触れ合える集いの場になってくれるようにとの願いを込めています。その発想のベースには、京阪グループが推し進める、“人にも地球にもいいものごとを、毎日の生活の中に、楽しく、無理なく、取り入れていくことができる明るい循環型社会の実現”を目指す活動「BIOSTYLE PROJECT」の理念が生きています。

耐久性の高い特別な芝

耐久性の高い特別な芝を採用

細やかな手入れが必要で費用のかかる天然芝を敷き詰めるには、さまざまな工夫が必要でした。芝生広場の面積は約1,000平方メートル。多くの人々が行き交う駅前広場では耐久性が求められるため、サッカー練習場で使用されている特殊な芝工法を採用することにしました。それによって耐久性と美観をキープすることが可能に。芝生の維持管理等にも持続可能なスタイルを模索し、いつまでも使い続け、愛され続けるサステナビリティを実現しています。

立ちはだかるハードルに
全員で知恵を絞る日々

芝生広場の活用においては樟葉駅前広場が枚方市の公的道路用地である点が大きなハードルとなりました。道路上では許可なく占拠して歩行者の滞留を促したり、ものを販売もしくは何かを催すことは原則禁止されています。広場でのイベントを企画・実現するためには、厳しい規制と向き合う場面に幾度も遭遇しましたが、そのたびに関係各所と折衝し、想いを丁寧に伝えていきました。

voice

“自分たちの思い描いたことを
実現するために奔走しました”

  • 株式会社京阪流通システムズ 共創推進室・くずは事業部兼務リーダー 上田周功さん

  • 株式会社京阪流通システムズ
    共創推進室・くずは事業部兼務
    リーダー
    上田周功さん

“自分たちの思い描いたことを
実現するために奔走しました”

やはり、一番苦労したのは駅前広場が道路空間であるという点でした。広場のニーズをはかる実証実験としてイベントをやろうとしても、さまざまな規制が目の前に立ちはだかりました。例えば、警察や行政との協議において、道路上では金銭の授受をしてはいけない、お酒を取り扱う際はフェンスで囲わないといけない等、イベントを開催するには高いハードルがありました。そのつど警察署に出向き、「今後を見据えてこういう商いをできるようにしてもらえませんか?」と交渉し、少しずつ理解していただき、ハードルを一つずつ乗り越えていきました。実績が積み重なり、徐々にできることが増えていったのはうれしかったですね。実証実験イベントでは、毎回すごく手応えを感じました。これからもさまざまな形で地域の方々や一般のお客さまに気軽に使っていただける広場であればうれしく思います。

協議会を立ち上げて
次々と実証実験を実行

ほこみち

樟葉駅前の空間を、日常的に賑わい、長く地域の方々に愛される場所にするためには、どうすればよいのか?地域の方々と広場を共創する未来を見据えたときに、これまでのようにイベントを企画するたびに、ベンチやカフェなどの設置について協議をしていたのではこれを実現することはできません。
そこで、枚方市と協議を行いながら、賑わいのある道路空間を構築するための制度である国土交通省の「歩行者利便増進道路(通称ほこみち)制度」の活用を目指すことにしました。この制度を活用すれば、道路上にテーブルやベンチを置くことや飲食を販売することが可能になるなど、道路使用に対するハードルが大幅に下がることになります。すると、空間の活用に伴う関係各所との調整がスムーズになり、出店やイベントの開催も、柔軟に行うことが出来るようになるからです。
しかしながら、ほこみち制度に指定されるためには、安全性の確認や通行者の妨げにならないことなど、賑わい創出に加えて様々な課題があり、それを検証するために実証実験を行う必要があります。そこで、2023年11月に京阪流通システムズが中心となって「樟葉駅前広場活性化協議会※」を発足し、翌5月~7月にかけて実証実験を企画・実施。地域の方々と持続的に共創する空間づくりを実現するために、駅前広場の占用者への選定を目指しました。

※「樟葉駅前広場活性化協議会」構成メンバー:枚方市 / 学校法人関西医科大学 / 独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)/ 枚方信用金庫 / 合同会社PicnicWork / (株)西鶴 / 京阪ホールディングス(株) / 京阪電気鉄道(株) / 京阪バス(株) / (株)京阪百貨店 / (株)京阪ザ・ストア / (株)京阪流通システムズ

ナイトエコノミーの取り組みとして2023年9月1日から2日間催した「くずは夜市ヨイノクチ」

想定外の人気を博した数々の実証実験

さまざまなニーズを探ろうとしたイベントはどれも大盛況を博しました。とりわけ夏の暑さを避けて集客するナイトエコノミーの取り組みとして2023年9月1日から2日間催した「くずは夜市ヨイノクチ」には3万人ものお客さまに集っていただくほどの人気でした。また、2024年5月19日には駅前の芝生広場をピクニック感覚で楽しんでもらおうと「Wonder Happiness PICNIC」を開催。お子さま向けの遊具や移動図書館、ライブショーやキッチンカーが登場し、ファミリー層に大好評でした。どのイベントも地域のアーティストや飲食店に参加・出展いただくことで地域の方々との共創をかなえ、地域とのより密な一体化、地域活性化への貢献につなげました。

「Wonder Happiness PICNIC」 「くずは夜市ヨイノクチ」

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“みんなに愛される広場に
なるためのお手伝いを
今後も続けていきたい”

  • 株式会社京阪流通システムズ 共創推進室・成長推進室兼務 クリエイティブコーディネーター 西 涼子さん

  • 株式会社京阪流通システムズ
    共創推進室・成長推進室兼務
    クリエイティブコーディネーター
    西 涼子さん

“みんなに愛される広場になるための
お手伝いを今後も続けていきたい”

このプロジェクトではクリエイティブコーディネーターとして、コンセプトワークや企画デザイン、販促物の制作、装飾の監修などを担当しています。こうしたクリエイティブワークって、どちらかというと裏を支える仕事で普段は黒子のような存在です。また、通常は外注が多く、私自身も調整役に回ることが大半ですが、実証実験の企画においては私がつけたネーミング、私が作ったビジュアルがそのまま表現物として外に出ていきました。その結果、「くずは夜市ヨイノクチ」のゲートに掲げた電飾の看板がすごく可愛いかったとか、ネーミングがキャッチーで覚えやすいなどのお褒めの言葉を直接かけていただけて、すごくうれしかったですね。デザインセンスを感じる訴求物はその街のイメージアップに直結すると思いますので、今後とも樟葉エリア全体のイメージアップにつながるような制作物にこれからも携わっていきたいと考えています。

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“この広場が地域のシンボルに
なれたらうれしいです”

  • 株式会社京阪流通システムズ 共創推進室・くずは事業部兼務 サブマネージャー 奥 絵里奈さん

  • 株式会社京阪流通システムズ
    共創推進室・くずは事業部兼務
    サブマネージャー
    奥 絵里奈さん

“この広場が地域の
シンボルになれたらうれしいです”

実証実験のイベントに関わってみて、その都度市民の皆さんの期待感みたいなものをひしひしと感じることが多く、多くの方にとってもここが整備されることを待ち望んでおられたんだなぁと実感しました。私は、イベントに出演や出店してくださる方の誘致を行っていますが、大切にしているのは地元で活躍されている方、がんばっておられる方にお声がけをするということです。地元の方にこの場に関わっていただいて、地域の皆さんと密につながって盛り上がることで、樟葉というエリアに新たないい循環が生まれると思っています。毎日何かの催しをするというのは難しいですが、お日さまの気持ちのいい季節にはピクニックイベントが、夏の夜には夜市が、クリスマスにはクリスマスマーケットがある。そんな風に、この芝生広場が樟葉の街の風物詩を作っていけたらうれしいですね。楽しい思い出を持ち帰っていただいて、「また来年も来たいね」と楽しみにしていただける存在に育てばいいなと願っています。

ついに駅前広場がほこみち指定区域に選定。
占用者として京阪グループが参画する
樟葉駅前広場活性化協議会が選ばれることに

樟葉駅前広場

クリスマスマーケット

イベントがいずれも盛況で駅前広場のニーズや安全性を実証できたため、ついに樟葉駅前広場が「利便増進誘導区域」に指定され、2024年12月、樟葉駅前広場活性化協議会が占用者に選定されました。このような駅前広場で「ほこみち制度」が指定されたのは全国初であり、国や他の自治体からも期待され、注目されています。また、ほこみちの本格運用後初のイベントとして12月20日~25日にはクリスマスマーケットを開催。お客さまが色付けしたファニチャーを設置するなど、地域の方や参加される方々と「共創」する企画を盛り込み、共に楽しむ広場づくりを実現させました。

「HAPPINESS CHRISTMAS MARKET in KUZUHA」

今後のワクワクするまちづくりに
つないでいく
「くずは未来会議」の
発足とこれから

voice

“「くずは未来会議」を拠点に
地域の活性化を
支援していきたい”

  • 株式会社京阪流通システムズ 共創推進室・成長推進室兼務 マネージャー 田中又詞さん

  • 株式会社京阪流通システムズ
    共創推進室・成長推進室兼務
    マネージャー
    田中又詞さん

“「くずは未来会議」を拠点に地域の
活性化を支援していきたい”

これまでの取り組みを通じて、すごくいい駅前になったなとの実感があります。実証実験をした際の手応えでも駅前のポテンシャルには改めて驚かされました。ただ、せっかく駅前に芝生広場ができたのに使っていただけないことには意味がありません。地域の皆さんに今後どんどん幅広い用途で使っていただきやすいものにするためにはどうすればいいか。それを地域の皆さんとともに考え、未来のビジョンを築く場として「くずは未来会議」を立ち上げました。メンバーには、協議会にも参加されている大学の方や金融機関の方、地元メディアの方などの他に、商店会の会長さんやデザイナーの方など、それぞれがまちづくりに関心があって、地元でいろんな活動をされてる方に参加していただいています。地域でムーブメントを起こすような方々と議論し、しっかりと連携するプラットフォームとして機能させていきたいですね。
樟葉駅は、1日の乗降数が5万人ほどあります。それだけの方が往来するのですから何か催しをした時の集客力も、売り上げも、他の場所でやるのとはまったく異なります。だからこそ、ぜひ地元のいろんな方に使っていただいて地域の活性化に寄与できたらと思います。いいサイクルで地域の活動が循環する支援を持続的にしていくことが目標です。

株式会社京阪流通システムズの皆さん

■株式会社京阪流通システムズの皆さん

2025年3月掲載

ポスターギャラリー こころまち つくろうポスターギャラリー