こころまち つくろう 活動レポート

こころまち つくろう 活動レポート Vol.54 お客さまに喜ばれる良いものを追求し続けて40年。~京阪百貨店40周年、情熱と真心の売場づくりを引き継ぐ「いま」をご紹介~

京阪40周年

1985年10月、京阪電車の車庫があった守口の地に京阪百貨店の第一号店が誕生しました。地域に根ざした“郊外型ターミナル百貨店”として、沿線のお客さまに寄り添うサービスに知恵を絞り、魅力的な売場づくりと商品構成に注力してきた姿勢は現在にも引き継がれています。2025年に開業40周年を迎える京阪百貨店の、業界の慣習に縛られない革新的な歩みを振り返るとともに、現在最前線でお客さまにより良い商品を提供するために力を注ぐ現場の声をレポートします。

最後発だからこそ、最も新しい百貨店であれ

京阪百貨店守口店開業日の様子
京阪百貨店守口店開業日の様子(1985年10月12日)

開業以前、関西の5大私鉄のなかで百貨店を持たないのは京阪だけでした。それまで幾度か機会はありながらも果たせなかった“いつかは百貨店を”という悲願を実現したのが守口店です。社内に百貨店の現場に精通した人材が皆無という弱みを逆手に取り、自分たちらしい発想と仕組みづくりで独自のスタイルを追求した姿勢は開業当時大きな話題を呼びました。その一つが「ショップ制」であり、また、生鮮3品(鮮魚・精肉・青果)の直営化でした。“最後発の百貨店だからこそ、最も新しい百貨店でなければならない”との考えのもと、“郊外型ターミナルの店舗として沿線に住む方々にとって『私たちの百貨店』になる”ことを信条として、他にはない地域密着百貨店を目標に京阪百貨店はオープンしました。

手間ひまを惜しまず、
よりよきものをお客さまへ
その想いを込めて売場づくりに奮闘

ショップマスター達

開業に際して他の百貨店からの人材に頼らず、京阪電気鉄道からの出向社員や大量の新卒社員の力だけで京阪らしい百貨店を目指そうとしたため流通業界からは“素人集団”と揶揄されることもありました。しかし、“素人こそ消費者であるお客さまと最も近い立場に立ち得る”との信念から、あえて“素人集団”と自ら称し、謙虚で素直な心を忘れず、お客さまの暮らしと地域に根付いていこうと決意します。業界の慣わしや因習にとらわれず、柔軟にお客さまにきめ細やかなサービスを提供できる体制は何かを追求し、導入したのが「ショップ制」でした。これはショップマスターと呼ばれる社員に全権を委ね、売場が商品構成から仕入れ、在庫管理、顧客管理までを一括で行うというものです。それまでの百貨店業界では、各部門それぞれで業務を行っているのが通例であり、独創的な体制でした。これによって担当商品に精通したスペシャリストが育成でき、また、お客さまの声を直接聞いて商品構成に反映できるため、求められるニーズに迅速に対応する売場づくりが実現しました。加えて、お客さまをお名前でお呼びできるような個人商店の良さを取り入れた関係づくりも築くことができました。

独自の売場づくりを創造してきたDNAを
今に引き継ぐ

戦略ショップ「美味衆合」

戦略ショップ「美味折々」

“よりよきものをお客さまに”届ける精神は、現在にも脈々と継承されています。
食品売場には、日々のくらしの中で全国の美味しい銘菓を楽しめるように取り寄せた『美味折々』があります。さらに、キッチンカウンターを併設した冷凍食品のセレクトショップ『5.0F(ゴエフ)』では、簡単・便利なだけでなく健康にも配慮した商品をラインナップ。お酒売場では新たなお酒の楽しみ方を提案してくれます。
独自のこだわりが光る売場が戦略ショップです。戦略ショップでは、ショップマスターが全責任を持って店舗のブランディングから商品構成、売場演出、イベント等に至るまですべて自主編集で展開しています。売場のしつらえにまでこだわったオリジナルの世界観のあるショップは、京阪百貨店ならではの持ち味があるとお客さまからも評価をいただいています。

次の世代に残したいと思う“本物”を
独自の世界観で切り取る
『トラディショナルスタンダード』

次の世代に残したいと思う“本物”を独自の世界観で切り取る『トラディショナルスタンダード』

2016年3月に立ち上がった京阪百貨店の戦略ショップ第一弾店です。今日まで受け継がれてきた伝統と、明日から始まる新しいクラシックの融合したスタイルをコンセプトとする『トラディショナルスタンダード』では、メンズ・レディースともに、着る人の年齢を選ばない知的で上質なアイテムがそろいます。“移り変わる流行よりも普遍的で美しいスタイル”をテーマに、「上品さ」をキーワードにした上質な生地、美しいカラーリング、無駄のないデザインという3つを兼ね備えたスタイルを提案。店舗はプレタポルテ※とオーダーメイドサロンで構成されており、お好みのブランドをプレタポルテで気軽にご購入いただくこともできれば、プレタポルテで気に入ったスタイルを自分の好きな色や生地、また自分サイズにパーソナライズしてオーダーメイドする両方をお楽しみいただけます。オーダーメイドは慣れていないと完成品のイメージがしづらいところがありますが、プレタポルテにそのシーズンのビジュアルイメージがリアルに展開されているため把握しやすく、自分好みのスタイルが追求できるとお客さまから好評です。

※プレタポルテとは、高品質な既製服を表すファッション用語の一つ
  • プレタポルテとは、高品質な既製服を表すファッション用語の一つ
interview
  • トラディショナルスタンダード

- 『トラディショナルスタンダード』は10年目を迎えたそうですが、10年を振り返っていかがですか?

こういうオーダーならこんな寸法で仕上げると美しいとか、どう着こなせば綺麗か等、スタッフ全員に経験と実績が積み重なっているのを実感します。私どもでは“知的で上品なスタイリングを身に纏うことにより、『人』そのものがブランドになり、周囲の人から好感や憧れを持ってもらえる魅力的な人物像”になっていただけるトータルスタイリングを心がけています。スタイリング提案をしたお客さまから後日、「素敵な装いだって褒められた」というお声をいただくと心が躍ります。それは、その方の魅力が引き立つスタイリングやコーディネートをご提案できた証だからです。ファッションは他人のために装うものではありませんが、やはり自分以外の他者から見られるもの。褒められるということは、その方ご自身が輝いて見えている証拠です。これからもお客さまご自身が引き立つ、そしてお客さまの新たな引出しになるコーディネートをご提案していきたいです。

トラディショナルスタンダード
トラディショナルスタンダード
トラディショナルスタンダード
  • 株式会社京阪百貨店 Traditional Standard ショップマスター 橘 勝世さん

株式会社京阪百貨店
Traditional Standard
ショップマスター
橘 勝世さん

- これからの目標、目指すところを教えてください。

京阪百貨店は40年も続く地域の百貨店ですので本当に温かいお客さまが多いんです。同じ買い物をするなら地元の京阪を応援したいという人情味にあふれた方がたくさんいらっしゃいます。それだけに、この温かさに甘えてはいけないと自戒し続けた10年でした。結果、今では「このお店が好きだから」と選んでいただけるようになりました。お店の応援団までになってくださったお客さまの期待を裏切らない、信頼されるお店であり続けたいと思います。そのためには、やはり「人」が大事です。京阪百貨店自体が『人間愛』が経営理念の、人ありきの商売が根付いている百貨店のため、従業員もお客さまもとてもアットホーム。それこそが都心の百貨店にはない強みだと思いますので、『トラディショナルスタンダード』でも“ひとのちから”をいっそう磨いていきたい。サービスにおいては「丁寧」よりは「親切」を目指したいですね。「丁寧」ってマニュアルでも可能です。でも「親切」は相手をしっかりと見て、お役に立てないと「親切」を尽くしたことにはなりません。親身で適切なサービスを提供できる人材を育てていきたいですし、自分自身も目指したいです。

“暦を感じる和の暮らし”を取り入れて
四季折々を楽しむ『くらしのこみち』

“暦を感じる和の暮らし”を取り入れて四季折々を楽しむ『くらしのこみち』

「暦を感じる和の暮らし」をコンセプトに、二十四節気※を指標として季節の移ろいを感じながら昔からの知恵やしきたりをもとに現代に合う暮らしをご提案するのが『くらしのこみち』です。流行り物ではなく、ずっと長く使い続けたくなる日常の道具などを主に扱っています。職人さんがつくるこだわりの道具や、個人の作家さんの器など大量生産できないものを直接仕入れている場合も多いため、一般的な量販店では買えない品々と出会う楽しみも魅力の一つです。お客さまの中にも「もう手に入らなくなって残念に思っていたけれど、ここにあったの?うれしい!」と喜んで入手される方もいらっしゃるとか。また、四季折々の暮らしには食が不可欠なため、季節の食卓をより豊かにする調味料なども全国からセレクト。リピーターで来られる方には健康志向のお客さまが多いため、できるだけ添加物が入っていないこだわりの食材などを取り揃えています。昔ながらのほうきやお鍋、台所道具がそろうため懐かしく感じる大人世代の方に混じって、最近では“丁寧な暮らし”への希求やSDGsへの意識から日本の道具を見直す若い世代のお客さまも増えているといいます。

※二十四節気(にじゅうしせっき)とは、太陽の動きを24分割する昔から使われてきた日本の暦の一つ
  • 二十四節気(にじゅうしせっき)とは、太陽の動きを24分割する昔から使われてきた日本の暦の一つ
interview
  • スタッフ手作りの「くらしのお便り」では季節のアイテム紹介やワークショップなどの案内も。

  • スタッフ手作りの「くらしのお便り」では季節のアイテム紹介やワークショップなどの案内も。

- 「くらしのこみち」ではワークショップも大人気とか。どんなことをされているのですか?

『くらしの手習い塾』と題してワークショップを開催しています。出汁の取り方や味噌仕込みなどもありますが、毎回人気なのがお正月の「しめ縄づくり」ですね。店内に電動ろくろを設置して行う陶芸体験も好評です。ボタンひとつでお料理やお掃除ができてしまう時代、ほんの少しの手間で暮らしにぬくもりや愛着が満ちるような時間をここではご提案したい。二十四節気を指標としていますが、昨今では難しい局面もあります。例えば8月に「立秋」と言われても体感とズレがありますよね。それでも季節の移ろいを感じていただきたくて、毎年8月の終わり頃には9月9日の「重陽の節句」に向けて、菊にちなんだ厄除けのお飾りを作るワークショップを実施しています。もとは菊酒を飲んだり菊にちなんだ行事や飾り物をしたりして不老長寿や繁栄を祈願する節句ですが、そういう風習を知っていただき、現代の生活の中で楽しんでいただけたらな、と思ってご提案しています。これからもお客さまと直接ふれあいのできる手習い塾には力を入れていきたいですね。

くらしのこみち
くらしのこみち
くらしのこみち
  • 株式会社京阪百貨店 くらしのこみち ショップマスター 山川 沙織さん

株式会社京阪百貨店
くらしのこみち ショップマスター
山川 沙織さん

- 山川さんの感じる京阪百貨店の魅力と、それをどうショップで活かしていきたいとお考えでしょう?

毎日のように来てくださるお客さまが本当に多くいらっしゃって。その方の生活の一部になっている様子を実感できるのは地域の百貨店ならではの魅力と思います。お客さまと距離が近いので商品を検討する際も「これはあのお客さまがお好きなはず!」とお顔が浮かぶこともしばしばです。実際、店頭に並べたら想像通り喜んでくださった時はうれしくなります。また、食品の仕入れには地下の食品売場に協力してもらっているのですが、そんな社内の風通しの良さも魅力の一つです。これら京阪百貨店の良さは、これからの売場づくりでも大切にしていきたいです。顔が見えるお客さまが多いので、そういうお客さまのご要望にはできるだけ応えていきたいですし、新規のお客さまともそんな良い関係を築き、もっと『くらしのこみち』のファンになってくださる方を増やせるよう努めていきたいです。

開業当初から人気!
京阪百貨店の食品催事の最前線をご紹介

開業当初から人気!京阪百貨店の食品催事の最前線をご紹介

開業当時から京阪百貨店は食品催事に着目し、さまざまな工夫を盛り込んだ催事を展開してきました。当初こそ自分たちの力だけでは出店者を集めることが難しく、他の百貨店の催事担当者に斡旋してもらうこともありましたが、ヒット催事を連発することで業界内に「京阪百貨店は売れる」との評判が徐々に広がっていきました。現在では全国からの出店者を集めるばかりか、イベントなどには出ないことで有名なお店にも出店いただけるまでになっています。京阪百貨店の目玉である食品催事を取り仕切る担当者に催事にかける想いを聞いてみました。

interview

- 風呂谷さんは守口店催事部ひとすじで11年目を迎えられたとのことですが、11年前と現在で見える風景はどう違いますか?

京阪百貨店は確かに開業時より食品催事に力を入れてはきたのですが、全国規模で見ると催事の規模感や売り上げ、集客の点で「まだまだ」と感じたのが11年前の正直な感想でした。その反面「潜在的にもっといける。いや、いかなければ」という想いを強く持ちました。商談をするたびに他の百貨店と比較され、店名を幾度も間違えられる。生来の負けず嫌いがムクムクと頭をもたげました。私はずっと野球をやってきたので、京阪の催事を高校球児における「甲子園」のような憧れの場所にしたいという夢がそこで生まれました。お客さまにとって全国の輝くスターが並んでいるだけでなく、お取引先さまにとっても京阪の催事に出ることを目標にしていただけるような場所にしよう!と、その時に決めて走り続けてきました。現在は、SNSの台頭もあって地域関係なく、全国のお客さまに有益な情報は瞬時にリーチできますし、集客に繋ぐこともできています。夢に近づけたかなと実感できる催事も多くなりました。

食品催事の最前線
食品催事の最前線
食品催事の最前線

- 業界でも名物バイヤーと呼ばれる風呂谷さんですが、難攻不落なお店に出ていただく秘訣はどこにあるんでしょう?また、印象深い思い出はありますか?

まず印象深い思い出といえば、10年通い続けて出店を決めていただいた北海道のお菓子屋さんですね。北海道のお店の方は道外に出られるのを躊躇される場合が多いです。加えて、そのお店は実店舗も大繁盛されているので催事やイベントを一切受けておられずで。最初は門前払いで、お菓子を買って名刺を置いて帰るだけを7年間続けました。8年目にやっと企画書をお渡しでき、そこから2年越しでついに出店いただけました。関西ではほぼ買えないものでしたので飛ぶように売れて、お客さまにも大変喜んでいただけました。こういうわけで特段、私ならではの秘訣があるわけではありません。ただ、私は“三方よし”という言葉が好きなんです。お客さま、取引先さま、我々のみんなにとっていい道を探したい。その姿勢で交渉ごとに向き合います。さらに言えば、まず先方を好きになるのが私流の交渉術でしょうか。好きになればその人のことをもっと知りたくなるし、考えていることがわかるようになってくる。相手の方にとってのメリットに気付くことで、おのずと“三方よし”の道が見えてくる気がします。

  • 京阪の食品催事といえば最近の大ヒットは「ラーメン」と「かき氷」

- 京阪の食品催事といえば最近の大ヒットは「ラーメン」と「かき氷」ですね。

「ラーメン」については、大手の百貨店の催事に打ち勝ち、うちならではの持ち味が出せる催事は何か?と追求して辿り着きました。大手さんに出店するには規模的に提供数等の厳しい条件があります。人気のラーメン店さんは個人でやられているお店も多いので、限界がありますが、うちはそこまでの規模感ではないので、無理のない数で交渉できます。ラーメンはコアなファンが多い業界で、「あそこの店が催事に出る!」という情報はそれこそSNSであっという間に広がり、成功につながりました。「かき氷」に関しては最初からSNSでの拡散を狙い、完全予約制で募って催事に出ていただきました。ラーメン店もかき氷店も実店舗が遠方の場合や、行列店のためすぐに売り切れてしまうお店が多いのです。でも催事では夕方でも召し上がっていただけるのでその面も好評でした。

  • 株式会社京阪百貨店 食品統括部 兼 催事部 部長代理 風呂谷 政宣さん

株式会社京阪百貨店
食品統括部 兼 催事部
部長代理
風呂谷 政宣さん

- 最後に今後、風呂谷さんがやってみたい催事とはどんなものか教えていただけますか?

今は京阪百貨店の催事場だけで実施していますが、もっと広く、守口市を巻き込んだような規模の催事をやってみたいと考えています。まだまだ具体的な案ではありませんが、地元との交流も組み込みながら、市内のいろんなスポットでお祭りイベントのようなことができたら楽しいんじゃないかなと。百貨店を飛び出して、地域全体に広がるような催事を実現できたら、まちづくりにもつながっていくのかなと夢を持っています。

2025年9月掲載

第29弾 株式会社京阪百貨店 第29弾 株式会社京阪百貨店のポスターを見る

ポスターギャラリー こころまち つくろうポスターギャラリー