こころまち つくろう 活動レポート
京阪電車には、おなじみの営業用車両のほかに特殊な役割をもつ保守用車両があります。軌道検測車もそのひとつ。鉄道の軌道(レール)の状態が正しく保守管理できているかをミリ単位で測るための保守用車両です。このたび新型軌道検測車が26年ぶりにお目見えしました。最新技術が導入されたその魅力に迫るとともに、軌道を守る工務部保線課の安全・安心の系譜をご紹介しましょう。
軌道の品質を維持するために働く軌道検測車
軌道は毎日繰り返し列車の荷重を受けることで、上下・左右に少しずつ変状していきます。その結果、生じる軌道の狂いを定期的に測定し、適切に補修していくことは列車の安全走行には欠かせません。また、快適な乗り心地をお客さまに提供するためにも重要です。京阪電車の軌道検測車は2ヶ月に一度、営業運転が終わった深夜に京阪線全線を3日間かけて自走して、軌道に異常がないかを調査・記録しています。チェックする内容は左右レールの間隔、ゆがみやねじれ、高低差など多岐にわたります。
関西初登場となる最新メンテナンスカー
新しい軌道検測車が搬入された寝屋川軌道基地で、担当部署である工務部保線課の砂平さんにお話を伺いました。
新型軌道検測車の特長を教えてください。
「旧型はレールに検測車輪を接触させて機械的に検測するシステムでしたが、新型は車体の下部左右に計12個装着された2次元レーザーセンサーで感知する非接触式のハイテク検測システムです。時速50km以下で走行しながら、25cm間隔でレールにレーザーを照射、それをカメラで撮影し光学的にレールの断面や変位を測定します。更新前後では、デジタル化で精度が向上するほか、非接触式構造なので調整作業の労力もかなり軽減します。従来のものは、摩擦や振動の影響で検測車輪などの計測機器を調整する必要がありました。新型には運転席のほかにパソコン5台分ほどのCPUを備えた記録・観察用のPCルームがあり、走行しながら随時データを確認することができます。」
初めての日本製だそうですね。
「そうですね、1989年に導入された2代目、それ以前の初代とも海外製でした。当時、こうした軌道検測車は、海外製しかありませんでした。今回採用する非接触式の軌道検測車は、関西では初めて採用されるタイプです。部品の一つまですべて日本製にこだわり、新幹線電気軌道総合試験車(ドクターイエロー)も製造しているメーカーの高い技術力を取り入れているのが大きな魅力です。」
本格デビューはいつですか?また、検測の作業に変化はありますか?
「2015年2月9日に当社に搬入され、現在、試運転を重ねているところです。担当者が、運転や測定の操作及びデータ処理など、一連の作業を習熟した後、8月の検測から本格デビューの予定です。検測の項目は旧型と基本的に同じですが、それに加えて新型では、レール断面測定によりレールの形状や摩耗状態も確認でき、効率的なレール交換計画をたてることにも役立ちます。2ヶ月に一度、夜間3日をかけて京阪全線を調べて測定されたデータを記録し、保守管理値を超す数値が確認された場合は、保線課の担当者が現地の線路を歩いて調査、適切に措置することになります。」
法律より厳しい検査回数や管理値を設定、軌道を守り抜く
2ヶ月に一度、軌道を検測するのは業界でも珍しいと聞きましたが?
「法的に定められているのは年一度の検測です。ただ、私たちは高い安全と安心をかなえるために、2ヶ月に一度、全線を検測し、先んじて保守しています。
また、軌道の狂いが整備基準値に達すれば、軌道の補修を必要とするのですが、京阪電車ではより厳しい保守管理値を別に設定し、この保守管理値を超えれば、早めに保守計画をたてて軌道の保全管理を行っています。
軌道は電車の安全走行を支える土台です。最善を尽くす姿勢は施設を保守管理する工務部全員に共有されています。」
最後に、新型軌道検測車を導入してめざすことはありますか?
「軌道を測ったり、データを記録する点ではコンピューターが投入されてから日進月歩の進化を遂げています。新型軌道検測車によって、より高精度なデータをリアルタイムに確認し、レベルの高い軌道管理を行っていきたいと思います。しかし、得られた結果をもとにレールや枕木を実際に補修・交換するのは、昔も今も『人』の力なんです。保線業務は、その意味では100年前から変わりません。軌道検測車が動かない日も含め365日、私たちは全線を歩いて線路を随時チェックしています。それは、これまで京阪電車の工務部の人間が脈々と続けてきたことです。最新の機器を味方につけながらも、最後は我々社員一人ひとりの目と、手が、安全を守るんだという気概を胸に、快適で安全な列車運行を全員の心をひとつにして支えていきたいと思っています。」