こころまち つくろう 活動レポート
京阪グループでは、110年にわたって鉄道事業で追い求めてきた「安全安心」の理念を、くらしへ、社会へ、環境へと拡げる取り組みを進めています。その中核となる概念が「BIOSTYLE」です。2019年12月には、京都・四条河原町に「BIOSTYLE」の考え方を形にした施設「GOOD NATURE STATION」が誕生しました。今回は「GOOD NATURE STATION」の取材を通して、京阪グループが今後めざす循環型社会への貢献のかたちと、新しいライフスタイル提案の全容をご紹介します。

いつものくらしに、ちょっと美を
「BIOSTYLE」とは、身体に良いもの、生産者や作り手の想いがつまったものを商品やサービスとして展開することで、健康的で美しいくらしを実現するとともに循環型社会に寄与しようという京阪グループが提案するライフスタイルです。ひとや地球に良いものを取り入れていくことで、くらしの価値を高めるとともに、持続可能な社会の実現をめざすSDGs(Sustainable Development Goals =持続可能な開発目標)の達成にも貢献することを目的とします。2016年から5回にわたって実施してきた「BIO-ICHI(こころまち つくろう 活動レポート Vol.28 京阪のやさしさを“食”でまるごと体感!)」や「GOOD NATURE market」も、こうした活動の一環でした。
人にも自然にも良いものを楽しむくらし
世の中には、すでにナチュラルやオーガニックなものは数多く登場しています。ただ、人にも自然にも良いものを取り入れたくらしは、少しストイックでハードルが高い…、そう感じる方が多いのではないでしょうか。生活のすべてではなく、ひとつでも「自然」にすることで始まる彩りあるくらし、信じられる生産者が作ったものがすっと手を伸ばせばそこにあるくらし、そんな肩ひじを張らないスタイルなら気楽に楽しめるのではないか。そこで、楽しみながら健康的で良いものを自分らしく取り入れる新しいライフスタイルを“GOOD NATURE”と名付けました。
そして生まれた「GOOD NATURE STATION」

「GOOD NATURE STATION」は、「BIOSTYLE」の考え方を形にした複合型商業施設です。「健康」「心」「地域」「社会」「地球」、この5つに本当に良いと思えるものだけを集め、SDGsに貢献することをめざしています。「信じられるものだけを、美味しく、楽しく」をキャッチフレーズに、ストイックな「BIO」から、もう少しゆるやかで楽しく、人も地球も自然体で元気にする“GOOD NATURE”なモノ・コトが集まる場所としてオープン。何かを我慢して実現するナチュラル志向ではなく、心はずむ、本能的に心地よいナチュラルが集まっています。STATIONという単語には、単に駅というだけではなく、出会いや集い、ターミナルといった意味合いも含まれています。トレインステーションからライフステーションまで、幅広い価値観を提供していこうという想いからこの名称になりました。
サスティナブルでエシカルなモノ・コトと出会うフロア

この5つにGOODな「5 GOODサラダ」
全館において、サスティナブル(=持続可能な)でありエシカル(=倫理的)であることをめざし、さまざまな取り組みを展開しています。例えば1階のマーケットゾーンの「KITCHEN」で大人気の「5 GOODサラダ」は、有機野菜の皮や葉、根までを可能な限り使いきります。素材が持つ本来のおいしさを余すところなく味わうとともに、食品廃棄の減量につなげます。必要な量だけ購入できるスタイルでフードロスに貢献するナッツコーナーでは、プラスチック製のフタが不要な紙製折りたたみ式バタフライカップを使用。コーヒーなどの飲料も、このユニークなカップでお持ち帰りいただきます。バタフライカップを含め、提供する容器・カトラリー(ナイフ、フォークなど)類はすべて植物素材のバイオプラスチックや紙素材、木製素材を使用し、容器·包装の環境負荷低減に努めています。また、分別コーナーには食べ残し用のボックスも設置。施設内で出た食べ残しや食品廃棄物は生ゴミ処理機で処理し、農業用肥料として活用します。そうすることにより、館内から出た食品の余り物を活かして豊かな土壌を作り、おいしい農作物を育んで、それをまた収穫していただくという循環型農業の実現にも取り組んでいきます。
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必要な量だけのナッツを紙製の折りたたみ式バタフライカップで購入。コーヒーなどのテイクアウト用にも。
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紙類、プラスチック、ペットボトル以外にも食べ残しも無駄なく再利用できるよう細かく分別して廃棄できるコーナー
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『近江園田ふぁーむ』ではGOOD NATURE STATIONから出た食品ロス堆肥を使用した循環型の米作りが始まりました
“GOOD NATURE”に触れて、楽しむ

『発酵食堂カモシカ』オリジナルの発酵食品や
選りすぐりの食品を販売
地球環境への配慮に加えて、訪れた方がそれぞれの“GOOD NATURE”を見つけ、触れて、楽しめる工夫を凝らしているのも「GOOD NATURE STATION」の魅力です。京都に留まらず、日本全国、世界から“GOOD NATURE”の息づくものが集い、食べる・買う・泊まる・癒される多彩な体験を通じて“GOOD NATURE”を心と体で楽しんでいただけます。1階のマーケットゾーンには丹精込めて作られた野菜やワインのほか、何代と続く老舗の造り手の食品や調味料、京都を代表する発酵食専門店などの人も地球も元気にする食品が並びます。3階の化粧品、クラフト、カフェ、美容サロンのフロアでは台風被害で倒れた美山の樹齢100年以上の古木がベンチに。廃材にするのはしのびないとメンテナンスに手がかかるのを承知の上で蘇らせました。アロマ効果をもたらす精油も国産の和精油をそろえ、1階にあるホテルのエントランスでは、これらの精油を中心にブレンドしたオリジナルの香りが月替りでお出迎えします。クラフトゾーンの『KA SO KE KI』では、金閣寺や銀閣寺の修繕の際に出た古材を利用した名刺入れなども販売。ここでしか買えないと好評を博しています。
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日本中からセレクトした和精油は
ホテルのエントランスでも月替わりで
香りのお出迎えをしています -
金閣寺や銀閣寺の修繕の際に出た古材で
作られた名刺入れはその珍しさ・希少性で
人気のアイテム -
「生活に寄り添う器」をコンセプトに、
日常づかいの清水焼を提案する
「京都 清水焼の店 トキノハ」の器
京都の中心にありながら喧騒を忘れ、静寂に憩う
GOOD NATURE HOTEL KYOTO

4~9階に広がる「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」は、すべての人にゆったりと心地よいステイをお約束します。京都についての豊富な知識はもちろんのこと、“GOOD NATURE”な楽しみ方にも精通したコンダクターが、お客さまを笑顔でお出迎え。こだわりのバスアメニティやウェルカムスイーツ、ローカル体験ツアーなどが心と体に楽しい時間へご案内します。ホテル空間の内装には、経年変化する天然木をふんだんに使用しているため、訪れるたびに少しずつ味わいが増す愉しみを味わっていただけます。4階に広がる空間は、木と緑があふれ、自然に恵まれた京都のおおらかさに包まれるようなスペースとなっています。また「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」は、建物内で暮らし、働くひとの健康や快適性に焦点を当てた建物·室内環境評価システムWELL(WELL Building Standard®)認証を●月●日に取得しました。ホテル版評価基準によるWELL認証の取得は、当ホテルが世界で初めてです。
「京阪とくらす」時間を豊かに創造していきたい
「GOOD NATURE STATION」のめざすところについて、株式会社ビオスタイル 髙原英二(たかはら えいじ)代表取締役社長にお話を伺いました。
開業して3ヵ月が経ちました。お客さまの感触はいかがでしょう。
時間を見つけては売場に足を運び、お客さまの反応を確かめていますが、開業前の不安を払拭するくらい良いご評価の声を耳にします。とくに若い方からは「おしゃれ!」「京阪やるやん!」とか『RAU(ラウ)』のケーキを見て「かわいい!」などと、とにかく感嘆符の多いお声を頂戴します。感嘆符が飛び出すということは、驚きや新鮮さを感じていただいていること。この施設を創るにあたって「商業ビルとはこんなものだと刷り込まれている概念を全部疑い、既存のイメージを一旦壊そう。古い良きものはわきまえながら、新しいものを提案しよう」と決めていたので、そんな我々の想いが伝わっていると手応えを感じています。
商品を卸していただいているパートナー会社さんの反応はいかがですか?
こちらも、ありがたいお言葉を数多く頂戴しています。代々京都で営んでこられた農家さんや伝統を継承した食品を信念をもって作っていらっしゃる方々が多いのですが、皆さんがおっしゃるには、手間ひまかけて作ったこだわりの品々が、ひとつの想いでまとまって並ぶ場所はこれまでなかったそうなんです。ここでは、それができていると。お客さまにきちんと商品の魅力をお伝えできる場所ができた!と喜んでいただいているのは、私たちとしてもうれしい限りです。
オリジナルのコスメブランド『NEMOHAMO(ネモハモ)』やフードブランド『SIZEN TO OZEN(しぜん と おぜん)』など、ここから発信される自社商品も登場しました。鉄道会社が化粧品や食品を作って驚かれませんか?
意外性は指摘されますが、品質の良さを体感されると、そこはもう関係なくお買い求めいただいているようです。京阪グループが鉄道事業の「安全安心」の理念を、くらしへ、社会へ、環境へと拡げようと取り組む中で、化粧品も手がけることになり、6年をかけて『NEMOHAMO』を作りました。石油由来の原料に頼る業界の常識に挑み、天然成分のみで製造し、水さえも加えない植物そのものの力を凝縮した化粧品シリーズです。ブースターオイルとバランススキンローションは、2019年の『サスティナブルコスメアワード』において、最優秀賞と選考委員長の岸紅子賞をいただきました。いわば京阪の「安全安心」の理念が、化粧品の世界でも認められたわけです。こうした取り組みを、くらし全般にもっと推し進めていきたい。「GOOD NATURE STATION」は、その発信拠点だと思っています。
京阪バス株式会社
山科営業所 明瀬 実 所長
街のすみずみまで網羅して走るバスは地域にとってかけがえのない存在ですね。
「現在、京都駅から関西国際空港行きの路線があるのですが、第1便に間に合うよう始発は4時半に出ています。一方で夜は、電車の終電後も皆さまの帰宅を考慮して午前0時を過ぎても走っています。電車が及ばないエリアや時間帯をカバーし、暮らしの一番近くにある公共交通機関がバスです。また年を追うごとに車椅子をご利用になるお客さまが増えています。これから高齢化社会がさらに進むと、ますますバスは地域の交通インフラを支える主役になっていくと思います。自分たちが地域の皆さまの移動手段を担っている。その誇りを胸に、もっとお客さまから必要とされ、愛され、信頼されるバス会社となれるように全員一丸となって頑張っていきます」
次世代型モビリティサービスの社会実装に向けて
近年バス業界では運転手不足が深刻化する一方、超高齢化社会を迎え公共交通機関の重要性が年々増しています。
こうした背景のなか、京阪バスは大津市、日本ユニシス(株)と共同で、大津市において自動運転バスの実証実験に取り組んでいます。2019年3月の実証実験に続き、同年11月にJR大津駅前から琵琶湖ホテルを経由して、びわ湖大津プリンスホテルまでの区間で実証実験を行い、限定エリアで運転手が乗車しない「レベル4」での自動運転も行いました。この実証実験で得られた検証結果をもとに、自動運転をはじめとする次世代型モビリティサービスの社会実装を目指していきます。
また、同年11月には大津市内および比叡山エリアにおいて、「MaaS(Mobility as a Service)」の実証実験も行い、エリア内移動の利便性向上、誘客・周遊の促進への寄与を検証することで、エリアのさらなる活性化に役立てていきます。
2019年12月掲載